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連載 第一章 第四話 

美海家のⒸゾーン・オムライスのお話PART3

1. ここまでのお話について

 フルタイムで仕事をしながら、ワンオペ育児に挑戦している木島美海。息子の涼はまもなく6歳。
 美海は母の期待に添いたいと学生時代はがんばり、無事大手企業に就職した。しかし、そこでは力を発揮できず、結果海外勤務となる。母になった今、母の思いは理解できるけれど、涼には自分とはちがいもっと涼自身にフォーカスした学び方をしてほしいが、親はどんなことをすればいいんだろうと考えていた。また、美海は海外で資格を取得し仕事をしていた経験から、「与えられたものをこなす学び方」では、社会に出てからワクワクした仕事をするのは難しいのでは、と考えていた。

 そのころ美海には、ある日本企業からのヘッドハンティングの話が持ち上がり、親子で帰国することになったが、美海は日本での涼の教育に少し不安を感じていた。

 そんなとき偶然、ある先生が発した「子どものやる気は過去の体験に紐づいています」という言葉を耳にした美海は、オリジナルの「涼のやる気アップおもしろ作戦」をはじめることにした。

第一章終了まで無料(無料配信終了後有料化/サロン会員・本会員無料)
配信は月1回
第5回配信は3月上旬予定

第一章 第四部

(見取り図Cゾーン)キッチンでオムライス

店頭に秋のくだものたちがちらほらと並び始めたころ、保育園での懇談会が催された。体育会系のがっしりした体つきの通称「ガンちゃん」先生は、その見た目とは裏腹に、緻密な作業や処理が得意な教務主任。涼の大好きな先生のひとりだ。

「え~、みなさん。あと数か月でお子さんたちは卒園されます。毎年この時期には『小学校入学までに、家ではどんなことをさせればいいでしょうか。』とか『まだ○○ができないんですが、いつまでにできるようになればいいのでしょうか』なんて質問をされる方が多いのですが…」

ガンちゃん先生の話を聞きながら、美海は思った。

「できないことをできるようにする」…わたしみたいに海外に出て、日本を見つめてみると、「対価」って「人よりできること」に支払われるものなんだよね。だから、子どもに精神的な無理をさせてまでも、「できないこと」をできるようにしようとしなくてもいいんじゃないかな。

小学生の低学年や中学年の間は「得意なもの」「好きなもの」を探して、それを深めながら必要な知識を身につけられるよう工夫する。知育の面で「自信を無くすこと」になってしまうのは良くない。日本の教育を受けさせるんだから、体験を通して「やる気スイッチ」がオンになるように、いろんな「しかけ」を工夫する。小学生の間は、親が先回りをして先取り学習は極力しない。暗記で疲れされることにも気をつけたい。

苦手なものが出てきたら、そのときこそ「(学習で)できないことをできるようにする体験」をさせて「自己肯定感をアップさせる」。そんなときこそ、親の出番。親だからこそのゆっくり、じっくり伴走すればいい。

ガンちゃんの話を聞きながら、そんなことを考えていたら、美海はたまらなく涼に会いたくなった。
今日はオムライスの日だ。早く帰ろう!早く帰って涼とオムライスを作ろう。美海は気持ちを切り替えるように、深呼吸をするとスーッと息をはいた。

チキンライスをつくるよ

タマネギは乾燥を防ごうとして葉を丸くする

涼と美海がエプロン姿でⒸゾーンで材料をそろえている。

まずはタマネギです。単子葉のタマネギです。単子葉ですから縦線が入っている葉でした。

縦線ね、おぼえてるよ。この間、サラダにつかったほうれん草の葉はビリビリ。双子葉だったよね。でも…タマネギの葉っぱってみたことないかも。

そういわれてみれば、たしかに。わたしもタマネギの葉は見たことないかも…。
💡でも…実は涼がタマネギだって食べているところが「タマネギの葉」なんだよ。

タマネギが葉っぱだって聞いたことがあるけど、葉って緑じゃないの?

ママも仕事で北海道に行った時、契約農家さんの人から教えてもらったんだけどね、タマネギって乾燥しているところの作物なんだって。正確にいうと中央アジアってところなんだけどね。

この間、ママに教わったね。中央アジアってどこだっけ?

 涼がCゾーンの壁に貼ってある世界地図の方を向いて「中央アジア」を探し始める。美海が地図のユーラシア大陸の中央部でカスピ海の東側にある、ロシアと中国とアフガニスタンとイランに囲まれたあたりを指さす。
 *中央アジア5か国(カザフスタン,ウズベキスタン,キルギス,タジキスタン,トルクメニスタン)

このあたりはすごく乾燥しているんだって。

乾燥ってことは雨があまり降らないってことだよね。

そうそう、植物が育つには水が必要なんだけど、乾燥していているから水を大切に使いたいでしょ。つまりタマネギさんのからだの中の水分の蒸発させたくないのよ。それを人間にたとえると、寒い時は体の熱を奪われたくないよね。だからからだを丸めたり、あたたかい服装を心がけるでしょ。タマネギさんも同じ。葉っぱから乾いた空気に水分を取られたくないから、葉っぱを丸めていったんだって。

そうなんだ。空気が乾燥していると、水蒸気に姿を変えた水が空気に移動しちゃうよって、この間お洗濯の時に実験したよね。

そうそう。洗濯したものが乾くのは…って謎解きをしたよね。空気中の水蒸気の量って湿度っていうんだけど、空気の中に水分のつぶつぶの量だってイメージして。つぶつぶがたくさんいるとジメジメしてるって感じるんだよね。

飽和水蒸気量、結露を体験

「水蒸気」と湯気のちがい

空気中の水蒸気の状態について。
水の分子(つぶつぶ)は、運動会の入場行進のようにきちんと整列しています。水はあたたかい空気や熱にふれるとすぐにその列が乱れ、分子(ぶつぶつ)たちが皆それぞれに自由に動き出します。そして沸騰した水は、まず目に見えない気体の「水蒸気」となって口から吹き出すんですね。「水蒸気は下の写真のやかんの口の部分です。湯気と「水蒸気」まちがえる人が多いので気を付けてくださいね。

水は水蒸気になると体積が1700倍になります。「体積」を体験したり、1700倍なども、会話を通して体験することができますね。

「水蒸気」は、水が沸騰(ふっとう)気体になったものだとお話しました。
では、湯気はなにかというと、「水蒸気」が冷やされて、ふたたびこまかい水滴にもどったものをいいます。(上の写真を参照)
沸騰した水は、まず目に見えない気体の「水蒸気」となって口から吹き出すのですが、熱い「水蒸気」がまわりの空気にふれて冷やされるんですね。すると、温度が下がります。その結果、気体から液体にもどるからです。「湯気」は、液体といってもその温度は高く、目に見える細かい水滴の状態です。

小4年生、5年生では「飽和水蒸気量」という用語を学び、それに関する問題に挑戦するようになります。空気中に気体の状態でいられる水の量(定員)は決まっているので、満席で中に入れなくなったものは水滴などになって姿を現します。空気の中に入れる水の量(定員)を「飽和水蒸気量」っていうんだよ。となどと話してあげてください。「飽和水蒸気量」の学習は、中学受験はもちろん中学理科、高校化学基礎でも頻度の高い問題です。

空気中に入れる水蒸気の量は決まっていて、満員だと、それ以上は満員で入れない場合は、水滴になって姿を現すってことだね。

「水蒸気」が姿をあらわす「結露」について

空気中の「水蒸気」は目に見えないものですね。そこで、こんな実験はいかがでしょう。

「水蒸気」って空気中にいるっていうけど…、ほんとうにいるのかどうか、ぼくわからないよ。

なるほど。水は、固体、液体のときは目で見ることができるけど、気体になると姿が見えなくなるものね。わかった。かくれている「水蒸気」を確認してみようか。

美海はコップに冷蔵庫の冷たい水を用意して、テーブルの上におきました。すると、まもなくコップの側面に水滴が現れ始めました。

ほら、見て。コップのまわりにいた「水蒸気」が、姿をあらわしたわよ。姿を隠していても、コップの水が冷たいから、「水蒸気」ではいられなくなって水滴になったんだね。

へぇ~、「水蒸気」って透明人間みたいだね。

この姿をあらわした水滴たちを「結露(けつろ)」っていうんだよ。寒い時期に、ガラス窓がぬれているってことあるでしょ。あれも外の空気が冷たいから、お部屋の中にいた「水蒸気」が冷やされて姿を現した「結露」なんだよ。

空気中が満員で、姿を現した水のつぶつぶたち

「結露」は、暖かく湿った空気が冷やされ、空気中の水蒸気が水滴になって姿をあらわす現象ですね。美海と涼が実験したように、 よく冷たい水を注ぐとコップの外側が曇って水滴が付きます。これで空気中の「水蒸気」を体験することができます。また、 冬場などの外の気温が低い時期に、暖房によって室内だけが暖かく湿度が高いと、冷たい外気に影響されやすい壁や窓の内側に水滴がびっしり付いてしまうことがありますね。この場合は、室内の湿度なども体験することができます。

タマネギのお話 つづき

レシピの文章を読みながら

直径26㎝くらいのフライパンに❷バター大さじ1を弱めの中火で熱し、バターが❸溶けたら、❹鶏肉とタマネギを炒める。鶏肉の色が変わり、❺タマネギが透き通ったら、塩、こしょう各少々をふって混ぜる。

❶(レシピを見ながら)直径24㎝、我が家のフライパンくんは直径何㎝ですか。

直径は26㎝で~す。この間、測ったよ。

❷バターは大さじ1は何gだっけ。

バターの分子?だっけ、バターのつぶつぶが詰まっている状態が、測るものでちがうっていうやつでしょ。

そうだった。「密度」ね。大さじ1って15mL。mLは「体積」っていって、どのくらいの幅ですか~だから、重さではないんだったね。バター大さじ1の重さはたしか…12gだったね。

上記情報は雪印メグミルクサイトより

ぼく、バター大好き。牛乳からできてるんだよね。

そうだね。今度、お休みにバターについて調べてみようね。牛乳がどうやってバターになるんだろうね。

「とりあげ」の復活を目指して

 H社が運営する「とりあげ」。ここ最近SNSへの書き込みを見ても人気がなくなってきているのがわかる。業績もドンドンと落ちている。美海は、まずは本社の近くにある「とりあげ」に出向いてみた。ランチタイムを過ぎたころ、店に入るとドーンと重たい空気を感じさせるような店員の「いらっしゃいませ」。水を運んできた店員からもやる気のなさがビシビシ伝わってくる。運ばれてきた「とりあげランチ」のからあげをひと口。美海はボソッとつぶやいた。「ん。これは重症かも」

美海、それで唐揚げはおいしかったの?

美海は首をゆっくり振って答えた。涼は「オー、どうするんだぁ」とつぶやく。

仕事って、楽しくないとダメだって思ってるんだけど…。お店の人たちがみんな「楽しくない」「つまんない」って光線を出してるんだよね。

 さて、美海はチェーン店「とりあげ」をどのようにして建て直していくんでしょうか。それとも「とりあげ」は売却されてしまうのでしょうか。続きは次回ということで…。


第一章 第5話の配信は3月上旬の配信の予定です。
 美海家のⒾゾーン・トイレのお話です。お楽しみに…

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