目次
理科ちゃん登場!
まるでスーッと糸を引くように、
大木の間から無数の光が差しこんでいる森の中。
下草がびっしりと生いしげり、ひんやりとすみ切った空気で
満たされた中を3人の子どもが、
やな爺の山小屋に向かって歩いてきます。
やな爺によばれたって、何の用なんですか~。
ぼくは今夜、塾ですからすぐに帰りますからね。
すると、森のどこからか
あらぁ~、夢寝男じゃないの?
という声が…。
夢寝男は急ブレーキをかけて立ち止まりました。
うしろを歩いていた凜ちゃんも急ブレーキです。
理科ちゃん!
解説します。
理科ちゃんとは、やな爺の奥さんのこと。
悪いおばけではないのですが…。
わがままで、いたずら好きです。
その上、子どもが嫌いなので
夢寝男たちにいじわるをします。
やな爺も、夢寝男たちも
この理科ちゃんには、手を焼いているのでした。
なんの用だ!おれたちはお前に用はないぞ。
夢寝男が冷たくそういうと、
ほほほ、いつもながら失礼な子ね。
歓迎してあげようと思ったけど、
や~めた。逆にいじめちゃおうっと!
理科ちゃんがそういうと、
やな爺の山小屋のまわりにあるケヤキの木が
ガサガサと音をたてはじめました。
おや、木の幹から煙のようなふわふわとした
真っ白いものがでてきました。
それは、真っ白おばけの「ぼんやりさん」たち。
かれらは、つぎからつぎへと現れ、
夢寝男たちのまわりをどんどんと取り囲んでいきました。
すると、あっという間に、夢寝男たちのまわりはうす暗くなり、
ドームの中にとじこめられたようになりました。
理科ちゃんのいじわるクイズスタート!
かわいくない少年少女たちよ。
さっそくだけど、クイズに挑戦してもらうわ。
じつは、10分でこのドーム内の酸素がなくなるの。
だから10分でクイズ3問に正解すること。
わかった~。では、第一問、
どうして、10分で酸素がなくなる理由を答えてちょうだい!
こんなに広いドームの内の酸素が、あと10分でなくなる?
どういうこと?
夢寝男と凜にはさっぱりわかりません。
ところが、厚志にはその理由がわかっているようです。
ぼくが答えてますね。それはドームの中が暗くなったからだと思います。
えっ、暗くなると酸素がへるの。なんで?
ここにあるたくさんの植物がいっせいに光合成をやめるからです。
ん?光合成をやめたら、酸素がなくなるのか。
はらまき先生のいってたことって…。
夢寝男はそういうと、からだをくねくねさせ、鼻にかかるみょうな声をだしながら、「『みなさ~ん。植物は二酸化炭素をすって、酸素をはくのよ。だから、森の空気がきれいなんだって~おぼえて、ぜったいにおぼえて~。』って、はらまきはいってたよな。」といいました。
おぼてますよ。たしかに植物は光合成をおこなうときは二酸化炭素をすって、酸素をはいてます。でもね、それは、太陽の光あたっている晴れた日とか、昼間にかぎるんです。つまり、光合成をおこなうには、水や二酸化炭素のほかに太陽の光が必要なんです。こんなに暗いと光合成はできません。
光合成をしないとどうして、酸素が減るの、どんな関係があるの?
呼吸をしていますからね。
酸素を吸いますよね。
凜ちゃんは、「えっ、呼吸、呼吸…。」といって混乱しているようです。
人から何かを説明されても、せかされたり、一生懸命説明してくれてる人に「わかんないなんて言えない」なんて思ったりすると、頭にはってこないことがあるよね。
また、光合成のように、酸素や二酸化炭素と同じことばが、説明のあちらこちらで、でてくると混乱するよね。
もし、あなたもこれから凜ちゃんのようになることがあったら、ゆっくりと説明して!と申し出たり、方法を変えるといいですよ。
たとえば、ぼくの「たのもう~」道場を訪れるなどもいいんじゃない。まってます!
凜の様子を見て、夢寝男が「凜、落ち着けよ。人間と同じだよ。」といいました。
そして、「人間の呼吸は、空気中の酸素や二酸化炭素ををすって、すった何倍もの二酸化炭素をはいてるんだろう。」とゆっくりといったあと、だまったまま、ジーッと考えるている凜の言葉を待ちました。しばらくして凜の顔が、ふ~ッと明るくなり、「わかってきたかも。」といいました。
光合成をするときは、二酸化炭素をすって酸素をはいてる。
日光があたらなくなったら、酸素をすって二酸化炭素をはくようになるってことね。
凛ちゃんの言葉を聞いた厚志は、がっかりした様子で、「ちがいます。」といいました。
植物も人間とおなじように、いつも酸素をすって、二酸化炭素をはいているんです。でも、太陽の光があたると、ぼくたちが買い物にいくように、光合成に必要なものを準備して、食事をつくりはじめます。つまり、植物の成長に必要な栄養をつくりはじめるんです。それが光合成です。光合成をしているときは、二酸化炭素をすって、酸素をはいています。でも、呼吸もしているんです。
わかった!光合成をしているときも呼吸をしていて、光合成をやめたら呼吸だけになるってことね。
厚志が大きくうなずきます。「そのとおりです。」
なるほど、光合成をしているときは、つくる酸素-使う酸素=酸素が残るってことか。それを空気中にだしているから森の中は空気が澄んでるってことだな。ということは、はらまきの説明が足りないんじゃん!
日光があたらなくなると工場が動かなくなり、使うだけになるから酸素はどんどん減るってことね。ここにある植物たちが光合成をやめて呼吸だけになったら、酸素はうすくなって、二酸化炭素が増えるってことね。
もう、ごちゃごちゃした説明はいいから、早く、あなたたちの答えをおしえて!
理科ちゃんがイライラしたようすでたずねると、厚志が答えました。
植物はこんなに暗くなってしまったら、もう光合成はできなくなり、ドーム内の酸素というか空気をすいはじめます。だから、二酸化炭素が増え、酸素はうすくなっていきます。いかがですか。
ドームの天井から、ピンポンという音がして、「きゃ~正解」という理科ちゃんの声がしました。
もし、厚志の説明を読んでも、まだもやもやしているようなら、「お助け道場 たのもう~」にワープしてリトルやな爺あ~くんやわたし(う~ちゃん)の話を聞いてね。
第二問ね。植物が光合成でつくる栄養はなんだ!
これは凜ちゃんが答えること。
光合成でつくる栄養?な、なんなの。え~っと…。
凜ちゃんはあたふたしながら、厚志を見て声をおしころし、口をパクパクさせ、「わかんないよ。たすけて~」といいました。すると、天井から「ブッブー」。
えっ、ブッブーってなに?
ルール違反ってこと。第二問は「失格!」。
凜ちゃん、何やってるんですか。でんぷんでしょ。
凜はがっかり。
ホホホホッ…。第二問からやり直し!大変!あと4分で2問。答えられるかしら。
「理科、なんでもいいから早く、問題を言えよ!」夢寝男は大声でさけびました。
理科ちゃんは、「ほんとに失礼な子!」とはき捨てるようにいったあと、さらに「自分たちが勉強してないのが悪いんでしょうが」とブツブツと文句をいいながら、うんざりした声で「第二問のやり直し。光合成に必要なものはなにかしら?夢寝男が答えて。」といいました。
おれね。え~っと、これは、はらまきの言ってたことだ!根っこから水をすう。葉っぱにあるなんとかっていうところから、二酸化炭素をすう。それらを太陽の光で動かしている工場に運ぶんだよ。工場は、よう、よう…。
天井から「ブッブー」の音とゆかいそうな理科ちゃんの「失格!」という声。
それを聞いた厚志が「夢寝男くんは正解していますよ。」とさけびました。さらに「なにがブッブーですか。理科ちゃん、もしかして、わかってないとか?」とつぶやいて笑いました。それを聞いた理科ちゃんは少しの間、「……」。そのあと何ごともなかったように「第三問」といいました。
えっ!理科ちゃん、ごまかした~。
クイズは「光合成に必要なもの」を答える、でしたね。夢寝男くんは、水・二酸化炭素・太陽の光とちゃんと答えています。夢寝男くんが思い出せなかったのは光合成をおこなう工場の名前。「葉緑体」でした。緑のつぶつぶですね。
理科ちゃんは、すご~く残念そうに「では最後のクイズね。がんばらないで!」といいました。
そして、「植物はからだが熱くなったらどうするか知ってる。あなたたちでいうと運動したり、熱を出
したりするとからだが熱くなるんじゃない。では、あと1分30秒ね。」
熱を出すと、いつもおじいちゃんが汗をかけっていうわ。植物も汗をかくの?
そのとき、厚志が「何だか暑くなってきました。ドームの中に熱がこもってきたんです。つまり…」
酸素がうすくなって、二酸化炭素が増えてきたってことか。
そういえば、『二酸化炭素が地球を暑くしている』っていう本を読んだ。この暑さは二酸化炭素のせいなのね。クラクラしてきたわ~。
どうしよう、あと、50秒です。え~っと、植物のからだの温度をさげるのは…。
うわぁ~もう、ダメだ~。暑さでなにも考えられません。
と、そのとき、凜が「なんだか息苦しいわ~」と言い出しました。すると、理科ちゃんがうれしそうに「あと20秒ね。早く答えをいわないと、このドームからでられなくなるわよ。」
夢寝男は「厚志、がんばってくれよ~。」と弱弱しく言ったあと、「なんだかおれも、頭がボーっとしてきた」と言ってすわりこんでしまったのです。理科ちゃんの声はますます元気いっぱいです。「はい。あと10秒。9秒、8秒、7秒、6秒…」
と、夢寝男の後ろからでバタリと何かが倒れる音がしました。厚志です。それをみた理科ちゃんは勝ち誇ったように笑い、「はい、あなたたちの負け~」とさけびました。ところが、そのときドームの中をバリバリバリ…と何かを引き裂く音がし、目の前が一気に明るくなりました。と同時に、冷たい空気がスーッと流れこんできたのです。
奥~、またいじわるをしておるな!
そう、やな爺がおばけケヤキたちをもとにもどし、夢寝男たちを閉じこめていたドームを消してくれたのです。
理科ちゃんは、やな爺の声を聞くやいなや「し~らない」といって、どこかに消えてしまいました。
こうして、夢寝男たちはかろうじて難をのがれたのでした。
おばけケヤキについて。ケヤキは陽樹ですね。
難関校を受験しようかなって思っているみなさんは、難問道場「ほんまかいな!」で確認しておいてくださいね。
(「難問道場」は会員専用サイトです。会員の方は移動してくださいね。)
理科ちゃんとのクイズ、困ったら「お助け道場 たのもう~」
ここは、「お助け道場 たのもう~」担当はリトルやな爺あ~くんとう~ちゃんです。
光合成について
植物は動き回ることができないよね。
きみたちのようにスーパーやコンビニに行って、
食材やお弁当を買うことはできないね。
だから、成長するのに必要な栄養は自分でつくるんだ。
それが「光合成」。
作りだす栄養は「でんぷん」。
理科ちゃんたちは、これからも必ず「光合成」や「でんぷん」のクイズを
出題してくると思います。ここで理解して、クイズ対決に臨んでくださいね。
① 光合成に必要なもの
・根からすいあげた水
・葉には気孔という水や気体の出入口があるんだ。
(下の図を参照してね。)
その気孔から取りこんだ二酸化炭素
・光合成というのは、
下の図の①葉緑体という工場で
でんぷん(炭水化物ともいうよ)をつくるんだけど、
その工場を動かすには光エネルギー(太陽の光)が必要なんだ。
② 工場ってどこにあるの。
工場は葉にあります。
葉には下の図2のような➊気孔があるんだ。
とくに葉のうらに➊の気孔が多いんだ。
植物は、❷の気孔から酸素や二酸化炭素を
すったり、はいたりしてるんだ。
③ でんぷんはどうやってつくられるの。
光合成をおこなう手順
① 太陽から光エネルギーをもらう。
② 根からすいこんだ水を工場にはこぶ。
③ 葉にある❷の気孔から二酸化炭素を取りいれる。
④ 上の図3の❷の葉緑体というでんぷんをつくる工場は
緑のつぶつぶの形をしている。
❷葉緑体は太陽の光エネルギーで動くんだよ。
そして、でんぷんを作るんだよ。
でんぷんをつくるときに、酸素もできるんだよ。
蒸散について
蒸散は人間でいうと「汗をかくこと」ににているよ。
それは、植物の葉・茎や枝でおこなわれているんだよ。
蒸散は気孔が開いていて、
水分(水蒸気)が❷の気孔からでていきやすいとき。
それは、どんなときかというと、
・太陽の光が強いとき。(日差しが強いともいうね。)
・気温が高いとき。
・風が強いとき。
雨が降りつづいたり、
梅雨の時期のようにじめじめしていると、
気孔を開けて水分を外にだそうとしてもできないの。
だから、蒸散はおこりにくいのよ。
じめじめしていると、空気中には水蒸気がいっぱいです。
すでに満員で、
水分を外にだそうとしてもできないってことだね。
また、雨がぜんぜんふらないよ~、という
日照りのときは空気が乾燥しているでしょ。
根からすいこむ水も
たりなくなるかもしれない。
人間の世界でも
「雨が降りません。
ダムの水が不足しているので
節水してください。」って
いわれることがあるよね。
そんなときは、❷の気孔を閉じて、
からだの中の水分を
外にださないようにするんだよ。
こんなふうにね、
植物はからだが熱くなりすぎないように、
❷の気孔を開けて、水分をからだの外にだして
体温を調節したり、
逆に、水分が不足しそうなときは、
気孔を閉じて、からだの中の水分を
外にださないようにしてしているってことだね。