お電話でのお問い合わせ03-6869-1170
子どもが泣きだすと「駄々をこねている」と思われることがありますね。「駄々をこねる」を辞書で引いてみると「甘えて、親のいうことを聞かないでわがままを言う」とあります。ですが、わたしはそればかりではないと考えています。
まず、子どもはまだ語彙が乏しいですよね。たとえば「わかってもらえない」「買ってもらえない」など自分の思いを伝えることができません。理由はよくわからないけれどとにかく「不安」なのです。だから泣いてしまうのだと考えています。
目次
唐突ですが、人間と同じ進化を経てきた類人猿の子育てを見てみると、― たとえばゴリラの赤ちゃんなど ― 生まれてから4年近く母親の腕の中にいて、離れない。ずっと母の乳を飲んで過ごすといいます。ですから乳離れしたときには、ある程度のことはひとりでできるまでになっているというのです。しかし、同じ進化を経てきた人間の先祖は、他の類人猿たちがいる森を出て平地で生活をするようになります。そのため敵との遭遇に備えなければならず、命の危機や、さらには絶滅にさらされてしまったのです。それゆえ多産の道を選ぼうとしたのです。ところが、授乳をしている間はホルモン(プロクラチン)の分泌によって排卵が抑制され、生理が一時的に止まってしまうことがあるので、授乳を早く切り上げねばならなりませんでした。
まだ大人の介助を必要とする間に、乳離れをして「ひとり」を経験しなければならなくなったのです。人間の赤ちゃんは、もし周りの人の介助がなければ命の危険に関わることもあることを、生まれながらの本能で理解しているので不安になると泣いてしまうのです。
ちなみに生まれて4年間、母の腕の中で過ごすゴリラの赤ちゃんは泣かないそうです。
外出先で子どもに泣かれたりすると、困惑しますね。でも、そんなときは何とかして泣き止ませようとするのではなく、お母さん自身に「落ち着いて」と声をかけ、「わが子は不安なんだ」と思い出してください。
お母さんがあたふたすればするほど、子どもの「不安」は大きくなります。また、懸命に子どもに語り掛けても、子どもは泣いてしまった理由をわからないでしょうし、わかっても原因は説明できないことが多いことでしょう。
まずはお母さんが「落ち着いて」と自分自身にことばをかけてあげてください。
ご自分をほめてあげてください、「よくがんばった」と。今日の行動は花マルだと……。
そして子どもを抱き寄せ、落ち着いたようなら、どうして泣きたくなったのかをたずねます。「わからない」と答えるようなら、その原因を引き出せるようにサポートしてあげてほしいのです。
なかなか子どもから期待したようなことばは返ってこないかもしれませんが、同じような体験をくり返すことで少しずつ、「不安」の原因が姿を現すようになります。成長とともに、その理由と向き合うことの大切さも少しずつわかるようになっていくことでしょう。
親だって人間ですから、いつも平常心でいられるわけではありません。でも、わたしたち親も、感情のコントロールができないことがあります。冷静になって「イライラした原因」を考えてみると「なるほど」と気づかなかった内面と出合えることがあります。
わたしは人間の大切な能力のひとつに、他人を理解する能力や、相手にものを伝え、相手からもものを伝えてもらうというものがあると考えています。親子の会話から相手の気持ちを察したり、見抜いたりする能力を育てるために、わたしはお母さまたちに、できるだけ平常心で子どもの「不安」や「いら立ち」との対峙をする体験をサポートしてみてほしいとお願いしています。
この体験と吉本流の読み聞かせを組み合わせていただくことで、体験を国語の心情読み取りへの土台作りを活かすことができます。
そう、泣いちゃったのは悲しかったからなんだ。
そう、泣いちゃったのは腹が立ったからなんだ。
と、まずは子どもが発したことばを復唱することからはじめます。
そして、その内容を確認します。このお母さんのことばを子どもは聞きながら、自分の感情を表すことばを体験したり、感情のみなもとを知ったりします。
あの〇〇がほしかたのね。ママが買ってくれないかったから、泣いちゃったのね。そうか、ママもほしいっていうものは買ってあげたいんだけどね、もし、〇〇を買ったら今ある**はどうなるかな。遊べなくならないかしら。
そして、会話の中でまずは子どもの思いに共感します。そのあとで、子どもと一緒に考えるようにします。答えがでなくてもいい、話が途中で途切れてしまってもいい、そんな気持ちでトライしてみてください。
ブログの目次へもどる
吉本笑子©IKUEI / 当サイト内のすべての絵と文の転載はご遠慮いただきますようお願いいたします