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親子の時間 №4「好きなもの―それが生まれながらの力を引き出す」

子どもがどんなに成長しても、親の心配は絶えないのではないでしょうか。親離れ、子離れ、文字にすると「そうそう」、他の人の話には、「そんなことまで親が心配しても……」と思えるのに、気づけば自分も……。でも、長い現場での経験から強く思うことは、子どもの好きなことの中には、その子を輝かせる原石が眠っているということです。親が心配や世の中の流れに意識を使いすぎると、子どもの良い点を見つける感度が鈍ります。そこを見逃さないようにしたいですね。

親が提案するレール

最初に、「親の敷いたレールの上を走って来たから」という子がいますが、このレールがなければ子どもは何をしていいのかわからないことが多々あります。また、これを意識し過ぎて自分を出せずに過ごす子もいます。今回はこの「レール」について考えてみます。

乳幼児のころ

人間は、進化の過程で子どもの乳離れの時期を早めたり、骨盤の形を変えたりしたことで、人間の赤ちゃんは生まれてからしばらくは助けがないと生きられません。ですからこの時期の「レール」は必要です。

幼児から小学中学年のころ

自身で「考える」「自分で」何かをやろうとする瞬間が増えます。まだ経験が少ないので、「危険」にも気づけない場合があります。
「レール」の出番と非番がもっとも難しい時期です。
まず、日常生活において安全を確保できる状況なら、子ども自身に「決める」「選ぶ」をさせることからはじめてみてください。

小学低学年のころ、家庭学習は促さないとできない

家庭学習については、親がある程度かじ取りをしないと「学習習慣」は身につきません。そこで、小学校から大学までの、子どもたちの「学び」の流れを確認しておきたいと思います。

小学校では

学習のルールやこれからの学びに必要なツールといえる基礎を学びます。と同時に「学習習慣」を身に着ける時期です。
この時期の「学び」は知識との出合いが大半なので、「知るって楽しい」を体感させることも学習習慣を構築していく上で必要だと考えています。

中学校では

本格的な学習するための基礎を学びます。この3年間にどの程度基礎をきちんと格納できるかが、高校での学びの成果に影響を及ぼすと考えています。

高校では

学びの内容が一気に難しくなります。小学校で体験、会得してきたものと、中学校での基礎学力を土台に、幅広く学ぶことが求められます。難関中学受験では「大学受験で必要なことまで身に着ける必要がある。それは小学生には良くないことだ。だから中学受験は……」と、おっしゃる方がいらっしゃいます。これについて、わたしも賛成です。理解するのにとても時間を費やすことがあるからです。わたしたちが時間を費やすということは、子どもにもそれ相応の負担がかかっているということですからね。ただ、同時に高校で挫折してしまうケースも見てきました。それを防ぐ策になっていることも確かだと感じています。

小中高の学びを自動車教習所に例えて考えます

教習所に入所すると「学科教習」を受講します。道路交通法などのルールや、安全運転の基本的な知識を学びます。社会のルールを知り、「自動車そのものについて」と「運転について」の知識を学びます。これが小学校の学習に相当します。
つぎに「技能教習」です。「学科教習」で学んだ知識を使って、所内で実際に運転教習をします。実践で考えられるシチュエーションを想定し、それぞれの場合はどのように対応すればいいかについて練習をします。また、運転技能に慣れ、状況に対応できる操作ができるよう訓練をしていきます。これが中学校の学びです。
そして、いよいよ「路上教習」です。助手席に座った先生の指導やフォローを受けながら、何が起こるかわからない路上にでて、それまでの学びや練習を活かして教習が実施されます。これが高校での学びです。
そして、いよいよ卒業検定を受け、免許を取得し大学へ進むわけですが、大学は初心者マークを付けたドライバーの状態です。
教師陣はいますが、路上教習のときの教官とはちがいます。子どもたちはそれまで学んだことを土台に、大学の教師陣が準備してくれた舞台(彼らがそれまで時間をかけて会得してきたものを知ること)で、自分をプレゼンし、自分なりのオリジナリティーを手に入れようと研鑽しなければなりません。

大学という「社会への窓」を開けて

初心者マークが外れると、いよいよ「大学という窓」から社会に踏み出すことになります。これまでの社会にあっても、実践力、発想力、オリジナリティーなどが求められました。今までにないほどの情報通信革命が起こっている今、その力はもっと求められるようになるはずです。「オリジナリティー」を武器に社会の一員として活躍していくには、他にないものをもっていなければなりません。それには「自らを知る」という過程が必要になります。

幼児から小学生の間の「好きなことから、生まれながらの力を引き出す」を大切に

さて、長々とお話してきましたが、わたしがこれまで最も大切にしてきたのが、「幼児から小学生」という期間です。まだ、教習所に入所していない「既成のもの」が入っていない状態の子どもたちです。この時期に、レールに乗せて「既成の知識を無理に詰め込む」のではなく、五感を通じて既成の知識を披露し、「あれ?」「なんで?」「おかしい」と思わせること。また、本来は〇〇なのに、「なるほど、××なんだ」と的外れな発想を披露することを何よりも大切にしています。親や周りの大人は彼らの発想でその子の内面を知る機会を得ます。また、それを大切にするには、学科教習をどう受けさせればいいかを知ることができるからです。自動車教習所と違い、学科教習のカリキュラムを順番通りに教えるのではなく、初心者マークのドライバーになったときをイメージして、その子の「好きなもの、うまれながらのもの」から最大値を引き出せるように工夫すべきだと思っています。難しいことではありません。路上教習に出るまでは、家庭で、親子で、日常でできる工夫を積み上げ、継続することです。

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