なぜ「25歳に向けて」なのか、25歳と限定するのはなぜか、と問われることがあります。
幼かった背中が中学、高校、大学を経て社会に出ると、彼らは初心者マークを付けたドライバーです。運転操作はできても、一般道や高速道路ではあたふたすることがあるはずです。ですが、社会に出て数年すると運転にも慣れ、初心者マークがはずれた ― 25歳ごろ ― そこで、親の出番はほとんどなくなるといってもいいと考えています。
幼少期から親子で積み重ねたものが、やりたいことや仕事へとつながっていってくるといいなあ。彼らをより成長できるよう支えてくれたり、あと押しをしてくれるといいなあ。それが花マル笑子塾の「目指すもの」だと考えています。
目指すものへの最初のポイントは小学5年生後半ごろ
社会性が芽生えてくる小学5年生のころ、抽象的なことを理解する力が必要になります。まずはその時期に、それまでどのくらい「学びと体験」を積んできたかを問われます。また、体験から得た語彙の量も必要とされます。
これまで、難関中学受験指導の際に、「あっ、これ知ってる」「あっ、これわかる」というスイッチが入り、子どもたちの興味や関心の領域が跳ね上がる瞬間を多々目にしてきました。ですが、それで「花マル」ではなく、その「興味や関心」の芽を子ども自身が育てられるよう「しかけ」が必要になります。なぜなら、25歳の手前の高校の学びで苦戦する子が多いからです。
■さまざまな工夫を活かすために、大切にしてほしい4つの視点
これからさまざまな工夫をご紹介していくのですが、その工夫を活かすために「大切にしてほしい4つの視点」についてお話したいと思います。それは決して難しいことではなく、親子だから、家庭だからこそできるものばかりです。ただ、子育てをしていると、いろいろなできごとや子どもとのやり取りの中で、気づかないうちに何かに流されてしまっていることがあります。また、わかっていることなのに、それが薄れてしまっていることもあります。
ですから、母の日々は多忙の連続ですが、ときどきここに立ち寄って、からまってしまった部分はないか確認してほしいと思います。
子どもの学習には不安になることも多いですが、わが子を胸に抱いたあの日の喜びを思い出し、またわが子と一緒に成長していける喜びに感謝してリセットしてほしいと願っています。
家庭での工夫を活かす4つの軸について
(1)子ども自身が動くように工夫しましょう
わたしたち母親が目指すものは、有名中学や大学に合格することや、社会的評価を受けて…というものではなく、ただただ、社会に出たわが子が、たった1度の大切な人生を自分らしく、力強く生きていく姿です。親元での日々はそのためのものだと思えば、危険さえなけば、できるだけ子ども自身が考え、決めて行動してみる体験が貴重だと考えています。
長年受験指導に従事してきて思うことは、「机上の学び」は子ども自身が動かないと期待通りの成果は得られないということです。
入塾説明会などに出向かれて、いろんなお話を聞かれることがあるかもしれませんが、そのときの内容はこの「期待通り」に学習が進んだときのことだとお考え下さい。
率直にいうと、家庭学習を自分からどんどんこなせる子は、ほとんどいないといっても過言ではないということです。ですから、大手進学塾での学習では親の声がけが必要なケースがほとんどです。ですが、あまりに「やらされる学び」が続くことは避けなければなりません。なぜなら第一関門の高校での学びに悪影響を与える可能性があるからです。また、目指す社会に出てから役立つ力を育てるのにも影響がでるかもしれません。
まずは「今足りないもの、基準を軸にできないことに視線を向ける」のではなく、「今できること、今あるもの」に視線を向けて考えるようにしてください。また子どもが「自身で動いたんだ」と思えるような工夫やしかけをしてみてください。
(2)五感を使った「学びや体験」を日常で、くり返す「先行体験」を
先行体験については「先行体験、なぜ伸びる」のページでもお話しました。重複する部分がありますがよかったご確認ください。
子どもはまだまだ経験が浅いです。
ことばひとつを取り上げても、知らないものがたくさんあります。ですから、子どもたちの中には学校や塾での学習で、「知らないことば」にたくさん出合っている経験が多々あるはずです。
そんな時「わからない」と思えば、調べてみようという子もいますが、大半の子どもは「?」のまま通過してしまいます。
大切な学習だから、親や先生がわからせようと暑くなればなるほど、思考が停止しまうというケースもあります。そんなことが続くと、簡単に「苦手だ」「できない」「わからない」と思い込んでしまうということがあります。でも、その子はできないわけではないのです。気持ちが壁を作ってしまっているのです。
反対にほんの少しでも「聞いたことがある」「あっ、知ってる!」と思えれば、子どもは粘り強くなります。身体が前に出てきます。さらには「こんな難しいことを…」と思えることでも驚くほど深掘りしていける能力を持っています。
この「あっ、知ってる」「聞いたことがある」を引き出す材料は、何気ない日常にたくさんあります。
ちょっとした工夫で、子どもの興味や関心の幅をできるかぎり広げ、五感を使って「学びと体験」を融合させ、それをくり返し体験させることができれば、高校生になっても通用する学習力の土台が育つと考えています。
体験と並行して「ことば」を
幼児から小学生にとって耳にする「ことば」はとても大切です。目にしている情景や状況、体験した他者や自分の心情とことばがきちんと接続できるように伝えたり、修正したりしてあげてください。
科学技術の目まぐるしい進歩の中、近未来のデザインを想像してみても、今以上に「人に自分の考えを伝える言語力」は必要になります。読書はお勧めしたいですが、強要するのもよくないと思われます。日常生活の中で「ことば」を育てられる工夫もご紹介していきたいと思います。
(3)子どもの心情を生物的側面からとらえて導く工夫を
親が不安になってしまう子どもの行動を、生物的側面から客観的にとらえる工夫を紹介します。
子どもの感情表現を客観的にとらえたり、人体のはたらきを知ることで、子どもが自身の感情と向き合えるように工夫したり、生活習慣がどれほど大切かを感じられるように工夫します。
(4)「学びと体験」を融合させ、興味や関心の幅を広げるようにしましょう。
子どもたちが社会にでる近未来に目を向けて工夫しなければならないと考えています。
今の学習は「教わったこと」をもとに評価を受けます。乱暴な言い方をすると、大学受験まで教わったことの理解度を試される日々が続くわけです。教わったことの枠からはみ出てしまうことを許されるケースはまれです。
ですから、「暗記する」学習のボリュームがとても大きい。たしかに、知識は思考の領域を広げてくれますが、AI(人工知能)が多岐にわたって活用されるであろう近未来では、知識の価値は暴落すると予想されます。「豊かさ」や「優秀」の定義も変わってしまうかもしれません。
そして、今とは反対に「知っていること」が足かせになる可能性もあるのです。なぜなら「知っていること」で思考がその先に進んでいかないことがあるからです。ですから、知識や経験の少ない幼児から小学生の時期には、机上での知識偏重の学びで自信をなくしたり、学習が苦手だと思いこんだりしないように注意をしてあげてほしいと考えています。